参考:スナップアップ投資顧問の業界分析

スナップアップ投資顧問のIT・コンテンツ業界分析によると、レコード業界のほか、システム業界、家電業界、通信業界などが音楽配信の関連ビジネスに参入した。ソニーミュージックの「Mora(モーラ)」のほか、エキサイト、NTTグループ、トランスコスモス子会社がネット音楽配信を始めた。

それまでネット配信は、各レコード会社が自社のウェブサイトで細々と自社タイトルを販売してきた。それが2004年の春から、続々とポータル型の音楽配信サービスが立ち上がった。

モーラ誕生

日本の音楽配信の立ち上げで先行したのは、「レーベルゲート(現・ソニー・ミュージックソリューションズ)」という会社だった。

レーベルゲートは、ソニー・ミュージックエンタテインメントなどレコード会社を中心とする18社が出資して設立された。いわば、音楽業界の「相乗り」の会社だった。旧来型の護送船団方式ともいえる。

そのレーベルゲートは2004年4月、従来の配信サイトを大幅に充実させた。サイトを一新し、サービス名を「Mora(モーラ)」に変えた。2004年4月時点で3万8000曲を取りそろえた。

エキサイトが配信を開始

2004年5月に入るとエキサイトが配信を開始した。2004年12月末までに10万曲を取りそろえた。

2004年6月からはNTTコミュニケーションズが、自社ISP(インターネット接続サービス)のOCN会員を対象に「OCNミュージックストア」を開始した。

NTTデータの子会社NTTデータコンテンツプランニング(NDCP、東京都港区)も、配信を始めた。NECが運営するポータルサイト「ビッグローブ」を経由しての配信だった。いわゆる「アプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)」方式を採用した。

トランスコスモス子会社も

トランスコスモスの子会社、リッスンジャパン(東京都渋谷区)も参入した。「2004年度内に40万曲をそろえる」との目標を掲げた。

その後、ヤフー、マイクロソフト、NTTレゾナントも参入した。「iチューンズ・ミュージック・ストア」を欧米で普及させたアップルも、日本で音楽配信を始めた。

EMIミュージックが先導

大手レコード会社の中で、主要なサービスすべてに楽曲を提供した会社がある。EMIミュージック・ジャパン(当時:東芝EMI、東京都港区)だ。さまざまな配信サイトに対し、積極的に楽曲を提供する先例となった。

EMIミュージック以外のレコード会社の場合、ほかのポータルサイト経由で楽曲を販売する場合も、配信元はあくまでレコード会社自身だった。サイト運営者は、配信業務の代行によって手数料を得るビジネスモデルだった。

しかし、EMIミュージックは配信業務の主体を、サイト運営者(配信業者)に有償で譲渡する形に切り替えた。サイト運営者が、楽曲の値決める権限を持つ。

エキサイトやNTTグループなどは、EMIミュージックの楽曲に着目した。そして、音楽配信ビジネス参入に動いた。

違法コピーに対抗

レコード会社が配信に積極的になった理由は、違法配信や違法コピーに対抗するためだ。当時、ファイル交換ソフトなどを通じて不正コピーがネット上に氾濫していた。

正規版を提供することで、インターネット上でどこに行っても楽曲が買えるようにした。

携帯電話で音楽配信(着うた)

スナップアップ投資顧問の業界資料によると、インターネット音楽配信の先がけといえば携帯電話だった。

レーベルモバイル(東京都港区)は2002年12月、「着うた」を始めた。1か月当たりのダウンロード販売件数が700万~800万曲だった。KDDIの3G携帯(第3世代携帯電話)の販売を押し上げるほどのヒットになった。

当初は30~40秒間の“さび”の部分だけの販売だった。料金は2004年の時点で、1曲100~200円だった。

当時、まだスマホは存在していなかった。携帯電話として「ガラケー」が使われていた。それでも、当時すでに外出時にだれもが持ち歩く必須道具だった。

このため、アップルの「iポッド」のような携帯型音楽プレーヤーの強力なライバルになると予想された。

オーディオ機器にも直接配信

このほか、据え置き型のオーディオ機器に直接音楽をインターネット配信する事業も始まった。

ソニーやシャープ、ケンウッドなど音響機器メーカー8社は、共同出資により、エニーミュージック(東京都港区)を設立した。2004年5月から音楽配信事業を始めた。

エニーミュージック

エニーミュージックは、オーディオ機器がネットに接続するための共通の規格を策定した。参加メーカーは、エニーミュージックにライセンス料を支払って対応機器を発売した。2013年1月にサービスが終了した。

ラジオで気に入った曲をダウンロード

ユーザーは、提携している音楽配信サイトであるMoraを経由して音楽を購入できた。さらに、エニーに月々315円のサイト接続料を支払えば、モニターからインターネット経由で音楽情報を得ることができた。

JFN系列38局のFMオンエア情報も閲覧できた。「ラジオを聞いていて、気に入った曲があったらすぐダウンロード購入」というイメージだった。